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トップインタビュー 挑戦する経営者たち

ビューティービジネス産業のオンリーワンに挑戦する「オオクシ」

インタビュー:オオクシ(千葉県千葉市) 代表取締役 大串哲史氏

ITオオクシ美容・理容業界 2018.08.24

会社概要

株式会社 オオクシ
創業 1964(昭和39)年12月
設立 1982(昭和57)年10月6日
代表者 代表取締役 大串哲史 氏
本社所在地 千葉県千葉市稲毛区稲毛3-5-8
電話043-204-1601(本社管理部)
事業内容 「カットオンリークラブ」「美禅」「ヘアーサロンオオクシ」
「ヘアカラーファクトリー」「カットスタイルクラブ」
「カット:ビースタイル」等、直営店運営、独立支援事業
従業員数 200人(2017年1月現在)
http://www.ohkushi.co.jp/

全国に理美容室合わせて36万4883施設(平成27年度末 厚生労働省)、従業理美容師数は72万7750人(平成27年3月末現在 衛生行政報告例より)と施設数、従業者数ともに毎年増加している。一方、市場規模は2010年以降微減が続いており、2016年度の理美容市場は前年度比99.5%の2兆1550億円と予測(矢野経済研究所)されている。

 

この厳しい理美容業界にあって、14期連続2桁成長を続けているのが千葉県千葉市の株式会社オオクシ(大串哲史社長)だ。千葉を中心に、東京、茨城に直営6ブランド42店舗を展開。同社は、情報分析と情を大切にする経営で ビューティービジネス産業のオンリーワンに挑戦している。

 

(株)オオクシ 代表取締役 大串哲史 氏(左)。右は利き手の(株)PR現代 代表取締役 下島仁

 

評価を数値で見える化する

 大串社長が創業者の父から理容室を引き継いだのが1997年、29歳の時。店の数字が全く見えない旧態依然のままだった経営から脱却するためにPOSレジシステムを導入し、顧客管理ソフトを自前で開発した。「先輩のほうが技術はうまい」、「オーナーからうまいと認められた」ということで成り立っていた技術職の世界に、ITを使って「数値化」による社員評価を行うようにしたという。

 

「POS導入後に再来店率を出してみたところ(カットができる)技術者になって2年目の若手スタッフがトップだったのです。カットが上手、下手と技術力で判断していたものを「再来店率」という数値化したら逆転現象が起きたわけです。その若手スタッフは未熟な技術を、お客さまの要望に添うために途中何度も確認をしながらのカットでカバーし、それを丁寧な仕事と受け取ったお客さまが再来店してくださったのでした。「仕事がうまい先輩から、後輩スタッフが教わる」という図式が成り立たなくなりましたが、良いことは先輩、若手関係なく取り入れることができるようになったのも「数値化」を行った結果だと思います」

 

「売り上げの数字も全部公開したので「自分はこの人より成果を出しているのだからもっと(給与を)上げてほしい」などと言い出すスタッフが出てきたりして大変でした。やはり、数字は見せるものではないのでは?と思いました。 でもすぐに、違う、数字は出し続けようと思い返して「これで揉めない組織、体制をつくろう」と決心しました。何のために数字を使うのかを明確して、ルールと約束を決めた上で公開するようにしました」

 

 同社の総再来店率(ある一定期間に担当したお客さまの何人が再来店していただけたかを表す)は平均85%、一番高い店舗では95%を越えるという。総再来店率85%以上が実現できれば売り上げは横ばいか右肩上がりが可能と同社では算出している。「数字」を出して共有することによって全スタッフが何をしたらいいのか、具体的な行動に落とし込めるようになった。

 

「数字とは、売上高、平均客単価、客数、年齢別、男女比などです。数字についてはきちんと分析します。スタッフにも数字の見方を教えます。出した後、スタッフ同士で議論して「どういう風に直したらいいのか」解決できるところまでを教育します。数字を出した後が大切。原因を考える、話し合い、分析し「こうすれば良くなる、明日からこうしていこう」という解決策を自分たちで導きだし、徹底して実行するまでが1サイクルです。みんなで決めたことだからみんなで守ろう、と。次の数字がでたら、同じように取り組みます」

集客にウルトラCはない!

 過去に「IT経営百選」最優秀賞(経済産業省選出)、「中小企業IT経営力大賞2010」経済産業大臣賞(経済産業省主催)を受賞するなど経営戦略にITの高度な活用を行い、成功事例として紹介されている。

 

「POSレジもそうですが、過去にはITでCRM(顧客関係管理)に取り組んでお客さまをどのようにリターンさせるかということもやりましたし、販促、ポスティング、折込などありとあらゆることをしてきました。その上での結論を言ってしまうと『ウルトラC』はありません。ウェブサイトも集客のためではなく、会社のPRと自分たちの取り組みをしっかり正しく伝えるために使っています。正しく伝えたことでお客さまがお越しになり、それを遥かにしのぐ“感動”というレベルでサービスを提供できた時に集客は加速度的に起こります。私たちサービス業の醍醐味、やりがいはお客さまに「ありがとう」と言われて喜ばれること。料金も「倍以上の金額を払ってもいいな、得したな」と思っていただいているかどうか。カットする際には時間に制限を設けず、ご納得いただくまでハサミを入れ直します。お客さまに喜んで感動して帰っていただきたいからです。われわれ経営者はそれが実現できる価格設定、仕組み、それで利益が出る店づくり、メニューづくりをすることが仕事です。だからこそ数字は相当細かく見て『均衡点』を探します。再来店率と回転率のちょうどいいバランスで社員が生き生きと働け、会社も伸び、お客さまのためになるその1点を見つけ出します」

経営理念に全員が本気で取り組む

 経営理念は、何のために会社があるのかということを明確にしなければならないが、つくっただけでは意味をなさないと大串社長は言う。

 

「たとえば、高校野球チームで、『甲子園に行く!』と決めたとします。9人のうち5人は行きたい! 4人は健康のために野球をしているとしたら、絶対に行けません。行けないばかりか練習すら成立しません。つまり経営理念は全従業員が納得し達成したいと思い、すべての判断基準になって、行動が変わってくれば成果を生むものです。半数の社員で社風が変わり、8割越えるとものすごい成果になります。当社では9割くらいがそう思っているので行動が全く違います。

 

 また、大串社長が24歳から今日まで加筆更新し続けている360ページに及ぶ『フィロソフィー』が全社員の行動規範、判断基準をつくるための学びの元となっている。

 

「書いてあるのは基本的なことです。『なぜ掃除をしなくてはならないか』『どうして上司の言うことを聞かなくてはいけないか』『なぜ挨拶をしなければいけないか』など。また業界で必要な考え方、私が学んでいる盛和塾の稲盛和夫塾長や、仏教から学んだことも入っています。そして一番大事なのは『徹底力』です。早く決断し、決まったことを徹底して実行して、結果を出せるかです。その仕組みをつくっています。

つまらないこと、当たり前のことを高いレベルで行うためには『人間力』が不可欠です。そのためにも『フィロソフィー』や経営理念が必要になります。当たり前のレベルをひたすら上げる努力を続けること。サロン見学に多くの方が見えますが『なぜこんなに忙しいのか分からない』と言われます。お客さまが望むのは日常の、いわば当たり前のヘアスタイルです。それをつくって気持ちよくお帰りいただくために高いレベルで当たり前のことを当たり前にしているからかもしれません」

前向きなチャレンジの元となる事業報告/経営計画書をつくる

 大串社長は自ら100ページにわたる詳細な事業報告を書いている。

 

「1年間やってきたことの結果を、店長以上の全担当者50人と個人面談をして報告をしながら、良いこと、悪いこと、データも全部出してまとめます。それを200冊つくってパートを含む全社員と共有します。そうすると自分たちに何が欠けていたのか、何が問題なのかが明快に分かります。そうすると翌年すべきことがはっきりします。もう一つ経営計画でやることは、5年後の姿を鮮明に想像して4年後、3年後、2年後、1年後何をしているかを前提に1年間分だけの計画を書きます。これを繰り返しています。その成果が14年間連続の二桁成長です。今は2年前にしたことの成果が今年に出る状況になっているので前向きなチャレンジもできます。会社も盤石な体制になっていますから多少の失敗や人の成長を待つことができるようになりました。人が育つには時間がかかるのです」

創業者の思いを汲む

 会社を引き継いだ時に初代の社名「ファミリーヘアサロンオオクシ」から「オオクシ」へと変更した。

 

「後々考えてしまったと思いました。社名に大事なことが入っていたなと気づいたのです。当時社員は住み込みでの修業でしたが、家族のように接していました。父も母も自分たちが16歳から社会に出て苦労した分、社員も分け隔てせず全員一緒の食卓で食事をしたり、旅行へ行ったりと本当の家族のように暮らしていました。『ファミリーヘアサロン』にはその思いが込められていたのです。

だから今、当社は機能体組織というピラミッド型の組織ではなく、共同体組織という家族みたいな会社を目指したいと考えています。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、誰も犠牲にすることなく全員が幸せになるような会社にするために頑張ろうと言っています。それが創業者の思いを汲むことになると思っています」

 

会社の制度もその思いを反映して、給料とは別に子供が生まれると小学校へ上がるまで月1万円が支給されたり、母子、父子家庭には18歳まで月5000円が支給されたりと手厚い。

 

「お金の面だけではないですが、なるべく家族に近い、そういうことを大事にしたいと思っています。その気持ちを社員もなんとなく受け取ってくれているためか業界平均40%超と言われる離職率が当社では一桁なのかもしれません。

売り上げを上げたり、生産性を上げたりするのも競わせるのではなく、お互いが手伝って協力し合うことが最も生産性の上がることになります。そういう社風をつくるためにも家族みたいな組織を作りたいと考えています」

 

お客様の声から生まれたカット中心のトータルビューティーサロンカットビースタイル(モリシア津田沼店)

人に関することは一切合理化を行わない

 これからは「人口が減る」という未経験の時代に直面し、今までの成功体験が通用しなくなり、変化に合わせてどんどん変えていかなければならなくなってくる。

 

「『理念』『創業者の思い』など大事な部分は変えてはならないものがあります。当社は人に関するところは合理化せず、手間ひまをかけます。たとえば、お客さまから1年間に3万数千通のアンケートの回答をいただきます。そのすべてに返事のハガキを出します。記念切手を貼って、文面を全部変えています。そのアンケートに書かれている内容は「今日から入院します」とか「主人が亡くなりました」とか店のことは書いていないものもあり、最初戸惑いましたが文通のように長い間続けているうちに独特の絆のような信頼関係ができ上がり、お客さまはスタッフを応援したり、近所にできた新しい店を教えてくださったり、時にはアンケートでスタッフの悩みを知ることもあります。本当の意味で地域の皆さまに支えられているのを感じます」

 

一人でも多くのお客様にご利用いただけるように性別、年齢を問わない「ノンエイジ・ユニセックスサロン」カットオンリークラブ(幕張店)

存在が世の中の役に立つ会社に!

 年間約100万人のお客さまを迎えている同社だが、お客さまの中には元気がなく、非常に辛い気持ちで死ぬことまでを考えて髪を切りにくる例もあった。しかし、ここへ来て元気をもらい、やり直すことにしました、とお礼を言いにきた方もいたという。

 

「もしかしたら、今担当する方かもしれない、だったら元気になって帰っていただこう。そこまで考えて仕事ができる人になろう、努力しようと。アメリカのシンクタンクも「理美容業は将来カウンセラーの役割を果たすようになる」と言っています。

私たちの会社が存在することが世の中の役に立っている、会社の発展が少しずつ世に中の役に立つ、そういう会社にしていきたいのです。年間のお客さま数×1円を特定非営利活動法人ルーム・トゥ・リード・ジャパン(発展途上国への教育支援を行っている)への寄付をその一つです。

周りから押され、下から持ち上げられて大きくなる、いわば『適者生存』です。必要とされて存在する会社になりたいと思っています」

 

【利き手・(株)PR現代 下島仁】(2017年『next』3月号掲載)

 

 

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