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実践実例レポート 次世代のお客さまづくり

きもの未来会議 「未来に向けてきもの店はどうあるべきか?」

未来あるきもの業界のために「きもの安心宣言」が採択!

きもの専門店きもの未来会議呉服店 2018.10.23

10月12日(金)、「日本橋三井ホール」にて、きものサローネの特別企画として「きもの未来会議」が開かれました。

近年、国内外から和装文化が注目され、きものレンタルやゆかた市場は、和小物を含め活況を呈しています。けれども肝心のきもの市場は活性化できているとはいえません。お客さまの求めるきもの店のあり方と、現在の呉服業界のどこに齟齬(そご)があるのかを、きもの店の代表やメディア、識者などのパネラーたちがディスカッションし、問題点を掘り下げる試みが行なわれました。

 

 

コーディネーター:松井敦史(信用情報、『KYOWAVE』(キョーウェーヴ)記者)

パネラー:浅子堅一郎(「日本橋三越」 呉服美術部営業部長)

     きくち いま(エッセイスト・イラストレーター)

     佐々木 英典(「日本きものシステム協同組合」理事長)

     鈴木康子(きもの季刊誌『七緒』編集長)

     矢嶋孝敏(「きものやまと」代表取締役会長)

     吉田満梨(「立命館大学」経営学部准教授)

ディスカッションはコーディネーターの松井氏によるきもの業界の問題提起から始まりました。第1部のテーマは和装業界の商慣行改善についてです。これは平成29年5月に和装振興協議会が策定した「和装業界の商慣行に関する指針」を踏まえての議題でした。

第1部 和装業界の商慣行改善

矢嶋 和装業界で初めて商慣行に関する指針17条が制定された背景には、

1 織子の高齢化など産地の疲労

2 業界の世代交代によって自由な議論の場が醸成された

3 「あぜくらたけうち事件」「はれのひ事件」等による和装業界のイメージの悪化に対する危機感

などが挙げられます。私たちはきもの業界全体で自由競争の原則を維持しつつ、持続的発展のための商慣行改善の必要性を痛感しています。不当表示に当たる二重価格表示の禁止や、消費者の情報不足に乗じた高額な価格提示の禁止を徹底し、消費者の不信感を払拭することに努めなければならないと思っています。

 

浅子 私たち百貨店の立場としては、正当な価格・品質表示は当然のこととして、仕立て代を入れたプライスカードの導入など、メンズシャツのシステムのような、消費者にわかりやすい表示に切り替えを行っています。きものは仕立て方法や取り合わせなどでいく通りもの価格が生じてしまうため、商談を進めるうちにどんどん価格が積み上がっていくこともあり、消費者の不安が増大しがちです。その不安を解消する表示方法へと改善しています。不当な二重価格表示は百貨店ではあり得ないことですし、セールにおいても禁じています。

 

佐々木 和装業界だけが独自の商慣行で商売をするというのは許されないことです。そのために私たちは、川上から川下までのサプライシステムを明瞭化する必要があると考え、ICカードを使ったトレーサビリティーをサポートしていきたいと考えています。商品の価値を示す情報を消費者に明示し、生産者の顔の見える産地商品として流通させる方法です。二重価格については残念ながらまだ行っているところがありますが、価格表示についても他の業界と足並みをそろえていかなければなりません。実態に基づかない極端な値引き販売も許されるものではありません。これらを徹底することで「持続可能な和装業界」が実現すると思っています。

 

きくち きものを愛好する一消費者として和装業界の印象を語らせていただけば、価格表示がまちまちで、うさん臭い印象が残っています。まずは仕立ての国産、海外産の別などの説明責任を果たしてほしいと思います。価格の説明がきちんとできるかどうかが、消費者にとっての一番の安心材料となります。

 

鈴木 今は価格表示がないというのはほとんどないと思いますが、『七緒』でもリサイクルきものや反物の価格表示を整理していきたいと考えているところです。仕立て代が別表記だったり、仕立て上がりとしていたり、煩雑で消費者にもわかりにくいので、業界での統一フォーマットを作られてはどうかと思っています。

 

吉田 価格というのは消費者にそのものの価値を伝えるメディアです。価格を低くしすぎると、きものの価値を毀損することになります。きものの価値を高めていくために、業界全体で管理していくべき問題と捉えることが大切なのではないでしょうか。このような場を通じて改善していくことを期待しています。

 

矢島 価格表示に対しては、もっとナーバスになるべきで、根拠のない二重価格表示を次世代に受け継いでいくことは恥としなければならない。消費者にとって、きものは「わからない」ものであること、そのわからない代表格が価格なのです。わかりにくさにつけ込むような商売はやめ、価格表示を改めることを徹底しなければなりません。

 

次に指針の第16条・17条にある、適切な販売手法について皆さまのご意見を伺いたいと思います。

 

浅子 弊社では和装小物の売り上げが大きいのですが、そこでお客さまに聞かれることがあります。「着付け教室の10回コースのうち、2回は販売会なのだが、そういうものなのか」という疑問です。そこで無理に売りつけられるのではないかと警戒するわけです。

 

佐々木 はれのひ事件や高額なキャンセル料、全額前払いの早期契約など、和装業界への不信感が高まる事件が続き、逆に老舗にはお客さまが戻ってくるという、悲しくもうれしい状況が生じています。現在、当組合では、外部の力や弁護士の協力を得て早期販売、契約の協議をスタートさせています。これがお客さまへの安心、安全につながると考えています。

 

きくち OL時代に白鷹の御召だと言われ、ふんぱつして買ったら化繊だった、という経験がありました。また、友人の話ですが、ある地方百貨店での三大友禅展に訪れた時、京友禅は今はほとんど新潟で作られていると言われたことがあるそうです。小千谷縮は洗えないと言われたこともありますし、店側の知識不足や不勉強を正してもらいたいと思います。また、内緒で買ったのにお礼状のDMで家族に知られてしまうということもあるので、顧客カルテにそういうチェック項目を表記してほしいと思います。かつてはローンを組まないと帰らせてもらえないという経験もしました。

 

鈴木 買っても買わなくても住所・氏名・電話番号を書かされることが多いですね。切手を貼っていないDMが届いた時は、家まで来たのかと怖くなりました。ポストにあるとうれしいDMはコーディネート情報や店主の独り言、作り手に取材した話など、お店のスタンスを伝えるものです。

 

吉田 不適切な販売方法をしていない小売店も多いはずです。1回だけで大きな売り上げを追う事業者もまだあり、そういうところが強引なのだなと理解しています。お手紙にコストをかけているのが見えると、お店の収益を圧迫しているか、価格に上乗せされているのではと思ってしまいます。伸びている店は、情報発信をウェブ等を含め、より効率的にしているところですね。

 

矢島 消費者の情報弱者であるところを利用するような商売は排除して、この1年で業界が変わったという動きを見せなければなりません。来年の成人式には必ず「はれのひ事件から1年」と言われますから。17条の指針は一つの契機に過ぎず、ゴールではありません。和装の持続的発展のために議論がやっとスタートしたばかりです。川上で「やっと」、川中で「まだまだ」、川下では「まだ知らない」ところも多いのです。倫理のハードルを上げていくことが、消費者の不信感のハードルを下げることになります。「きものは好きだが、きもの屋は嫌い」を解決するために持続的に議論を進めていく必要があるのです。

 

第2部 未来のきもの業界

松尾 きものは今、注目されているのにきもの業界は活性化していません。きもの店と消費者の間にギャップがあるのではないでしょうか。

 

きくち 私はきものはファッションの一ジャンルと捉えています。でもきもの店の販売員のなかには、ファッション業界と認識していない人もいると思います。消費者もすてきな着こなしをしている販売員がいないところで買おうとは思いません。販売員が自分で着てこそわかることを提案してほしいと思います。

 

佐々木 今、業界にはモノ消費からコト消費へとパラダイムシフトが押し寄せています。着付け、お出かけ会、ワークショップの取り組みなど、着るものを通じて、着ることの喜びを伝えることに重点を置いています。昨年からは、きものレンタル事業を栃木の日光で展開し、地方再生を和装からも後押ししています。

 

鈴木 小売店に求めるのは、上手に買い物ができる手助けをしてほしいということ。アパレルショップでは提案力のスキルがどんどん進化しています。メーカーの販売研修も進化し、コーディネート力、提案力のある販売員が出てきています。きもの店は客の傾向もセンスもバラバラなので、販売員にはヒアリング力を高め、客の要望を引き出してほしいですね。

 

浅子 今、百貨店でも「体験」が注目されているので、日本橋散歩やスタイリストのポージング講座などを開いて好評をいただいています。もう一つはデジタルトランスフォーメーションです。今後は電話セールスもDMもやめ、ウェブ情報の発信に移行します。

 

矢島 バブル崩壊とリーマンショックでアパレル業界は変わったのに、きもの業界はいまだに高度成長期のやり方を追いかけているところもあるのが現状です。売るという軸と着るという軸は、心と体と同様にバランスをとる必要があります。私は今がきもの業界を変える最後のチャンスと捉えています。

 

吉田 多様化してきている消費者に対して、さまざまなやり方をする事業者が出てくるでしょう。ユーザー視点、コト消費、お客さまとのコミュニティー、きもの好きのコミュニティー、コーディネート力、産地の情報など自店独自の強みを生かしてブランドを作っていく時代に入ったと考えています。

 

松井 きもの業界の未来を今より明るくするには?

 

佐々木 川下のフロントラインにいる者として消費者軽視のやり方に未来はないと思っています。また産地信仰なくして業界振興もあり得ないと考えているので、産地を学び、お客さまを大切にするためにも17条は羅針盤だと捉えています。

 

きくち 川上、川中、川下での話し合いも大切ですが、どうやってきもの好きを増やしていくかをもっと語り合うべきだと思います。

 

浅子 「楽しい」ことがきものの未来にとって一番大切ではないでしょうか。私は「売る、買う」から、「楽しむ、楽しませる」にシフトすることだと考えています。売らんかなではなく、売る側が「真剣に楽しむ」ことが人材を育てることにもなると思います。そしてデジタルでの情報発信も大切だと思います。

 

鈴木 日本にはきもの好きの土壌があるのですから、きものそのものの未来は明るいと思います。現状ではきものを買う人と売る人の出口が詰まっている気がします。そこがスムーズになるように願いますね。目が肥えてきていいものが欲しくなるのは当たり前のことですが、価格の高いもの、高いものへと向かわせるような風潮は払拭してほしいと思います。

 

矢島 きものの未来は明るくても、きものビジネスが明るいかは別の話です。たとえば長襦袢はなぜ絹じゃないといけないのでしょうか? そんなことはないはずです。私たちのところで、きものインナーとして3,800円でテスト販売したところ、大変な反響がありました。これはわかりやすい商品に対して消費者が安心して購入したという良い例だと思います。無理に買わされる不安から、相談できないというお客さまは、実に50%にのぼるのです。

 

吉田 これまできもの業界では商品ではなく商法が重視されてきました。これからはユーザーのニーズに寄り添える会社かどうかが試されます。そして従業員の満足が社会的な業績向上につながるのだと思います。市場規模ではない、あらたな業界指標(例えばそれは従業員満足(ES)であったり、顧客満足(CS)であったり、新規客数であったり)そういうあらたな業界指標が必要のように感じます。

 

最後に司会の松井氏より「きもの安心宣言」が読み上げられ参加者合意のもと採択されました。またディスカッションの後にはパネラーと参加者との意見交換(懇親タイム)を経て閉会となりました。

(文責・嵯峨紀子)

 

「きもの安心宣言」

 

 

 

 

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