IJT事務局主催セミナー 「天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンド」 パネルディスカッション

IJT事務局主催セミナー 天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンド パネルディスカッション

2026年1月の国際宝飾展(IJT)において「天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンド」をテーマとしたIJT事務局主催セミナーが15日(木)に開催されました。

劇的に進化を遂げるラボ育成ダイヤモンドの現在地を読み解き、「天然 VSラボ」という単純な二項対立構造では表せなくなった新しい価値観と市場構造について激論が交わされましたたいへん意義深いパネルディスカッションでしたので、ここにその一部を紹介します。(取材・文:下島 仁)

【進行統括】
(株)PERFECT 代表取締役/日本グロウンダイヤモンド協会代表理事 石田 茂之 氏

【パネリスト】
(一社)日本宝飾品貿易協会 代表理事 / ジャパンプレシャス 統括編集長 深澤 裕 氏
マーケティング コンサルタント/ブランド・HRコーディネーター 大畠 勝彦 氏
(株)日冨美 代表取締役/ UNO AERRE INDUSTRIES S.p.A. Executive Vice President滝野 順 氏
(株)ルシルケイ 代表取締役社長 鈴木 晃司 氏
※以下敬称略

IJT事務局主催セミナー 天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンド パネルディスカッション

石田
私が初めてラボグロウンダイヤに接したのは30年ほど前のことです。当時の人工ダイヤは今とは違ってあまり輝かない、黄色い品物でした。日本で初めて人工ダイヤモンドを研磨したのが、おそらく私だったと思います。当時は宝飾用途としてはまったく売れず、現在の市況は想像できないものでした。

本日のテーマは天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンドとは謳っていますが、どちらが勝つかというような話ではなく、正しい知識を身につけるための話し合いと捉えていますので、よろしくお願いします。

まずパネラーの深澤さんからラボ育成ダイヤの概要をレクチャーしていただきたいと思います。

深澤
まずラボ育成ダイヤの製造技術の進歩からお話ししたいと思います。ここ数年で目覚ましい進歩を遂げたラボ育成ダイヤですが、その変化の大きなポイントは大粒化と高品質化です。展示会場ではすべてDカラーのIFだけを並べる出展社もありますし、20ct、30ct、50ctなどの大粒のものも普通に並んでいます。そして低価格化です。2020年に天然の2分の1だった価格が2024年には5分の1以下にまで下がっており、今後さらに下がるといわれています。

製造・出荷のシェアは中国・インド・アメリカで4分の3を占め、研磨するのはインドが8割を占めています。そして消費するのは8割がアメリカです。低価格化したとはいえアメリカ市場の調査ではラボの利益率の高さも際立っており、粗利率は65%に及びます。

このように天然ダイヤには厳しい市場競争となっていますが、金額ベースでは天然が4分の3を占めるなど、天然ダイヤの逆襲もあり得ないわけではありません。

マッキンゼーによる「ダイヤモンド業界の未来シナリオ」では、天然ダイヤの将来の位置付けは3つのシナリオが提示されています。①天然ダイヤはニッチな贅沢品になる。②ラボ育成ダイヤははアクセサリーとなりジュエリーと棲み分けされる。③ダイヤ自体がユーザーから流行遅れとなり、市場が小さくなる。という3つのシナリオです。

IJT事務局主催セミナー 天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンド パネルディスカッション

そもそも人類はなぜダイヤモンドに心を奪われてきたのか?

石田
そもそもなぜ人類はダイヤモンドに心を奪われてきたのでしょうか。

深澤
やはり希少性やお守りとしての側面が大きいと思います。

大畠
近年に限っていえばマーケティングの力も大きいと思います。

滝野
王侯貴族のものだったという歴史的事実が憧れなり、文化として定着したのだと思います。

鈴木
ダイヤに対して人と人とが切磋琢磨し発展させてきた結果だと思います。

石田
天然ダイヤモンドの絶対的地位に対して人類が生み出した「ラボ」。天然は30億年を要するのに対し、ラボは30日でできてしまいます。これは「地球の奇跡vs人類の革命」と言っていいでしょう。

ところでラボ育成ダイヤの呼称は「合成ダイヤ」「ラボグロウンダイヤモンド」など、いまだ定まっていないところがあります。そもそも宝石と言えるのかどうか、その辺りの認識を皆さんに伺ってみたいと思います。

深澤
宝石の定義から硬い、美しい、希少というものがあります。その点、ラボ育成ダイヤは希少ではない面がありますので私は宝石ではないと思っています。呼び名についてはいずれ呼びやすい名称に落ち着くと思います。

大畠
ストーリーがあるのが宝石。組成はダイヤですがラボは工業製品ですので宝石とは言えないと思います。

滝野
ラボ育成ダイヤは宝石です。真珠との比較で考えてみると、養殖真珠は天然パールと同様に、宝石と認識されています。ならばダイヤがラボグロウンだから宝石ではないというのはおかしいのでは。

鈴木
ラボ育成ダイヤが宝石じゃないなんて考えるのはユーザーを見ていない表れでしょう。ラボ育成ダイヤを見せて宝石じゃないというお客さまはいません。例えば蘭の花だって栽培したものが美しい蘭として高値がつくわけです。自然のまま生えている蘭は美しくないから売り物にはならない。養殖の魚もお魚、養殖の花もお花なのです。

滝野
ラボが登場するまでは天然ダイヤしか市場になかったわけですし、ラボには新たな宝石としての位置付けを与えるべきではないでしょうか。

鈴木
リフォームに来られたお客さまのお話を伺っていると、譲り受けたジュエリーに使われているのがガラス玉であっても、そのお客さまにとっては宝石なわけです。そう考えるとラボ育成だから宝石じゃないとかの線引きのほうがおかしいのではと私は思います。

ラボは本当にエシカルか?

石田
ラボがエシカルかどうか、現場のリアルでいうとユーザーはどう捉えているのでしょう。

大畠
Z世代の回答は意外と慎重なものでした。まずラボ育成ダイヤのことを知らない層が8割。知っているが天然がいいという層が4割、あとは迷っている、もしくは別ものと考えている層です。一般のアクセサリーとしてならOKでもエンゲージではNGという回答も一定数あります。

ここから見えてくるのは、初めてジュエリーを購入する若い世代よりも、ある程度ジュエリーを所有してきた50代以上の年齢層にビジネスチャンスがあるのではないかということです。

滝野
そうですね、ナチュラルだと手が出ないけれどラボなら買えるという顧客層をターゲットにするといいですね。その意味では技術が進化し、価格がこなれてきた現在はラボ元年と言って良いでしょう。

鈴木
一時期「エシカル」であることを訴求ポイントに、顧客にセールストークを展開した時期がありますが、まったく響きませんでした。現場ではラボの美しさが純粋に評価されていると感じます。

深澤
販売の現場でどう説明するかは大切ですね。「天然はエシカルじゃない」「ラボはエシカル」という単純な比較はその製造工程や関わるエネルギーなどを考えても一概にそうとは言えないと思います。

美しさが同等なら“天然だから高い”はどこまで通用する?

石田
ラボが美しさで追いついた今、天然の価値は揺るがないのでしょうか。業界としてはどこに商機を見出せるのでしょう。

鈴木
そもそもお金がないからエンゲージを買わなくなっています。最近では親に勧められて先に同棲しています。女性もお財布が同じなので、そこから婚約指輪を買おうとはなりにくい。でもラボなら98,000円で買えるとなれば、プロポーズの際にエンゲージリングを贈る文化が戻ってくると思います。

大畠
天然ダイヤは時間の結晶です。ラボとは違う商材として訴求できると思います。特に高齢者向けにビジネスチャンスがあると思います。

鈴木
天然であることだけを売りにしたデザインのジュエリーならお客さんは買いませんから、違うコンセプトの商品として新たにラボの市場を開拓するべきだと思います。

深澤
海外からするとカラット数で勝負しない日本のエンゲージ市場は特殊です。天然だから高くてもある程度しょうがないというのは当面揺るがないと思います。

石田
なぜラボが安いのか?という質問にはどう答えるべきか考えておかなければなりませんね。

ラボ育成ダイヤの可能性は、ブライダル?ファッション?ラグジュアリー?

石田
ラボ育成ダイヤが今後伸びていくジャンルはどの分野だと思いますか。

滝野
加工のしやすさからいってブライダル、ファッション、ラグジュアリーの全てのジャンルで可能性があると思います。思い切ったデザインが可能だと思いますし、価格的にも広い層に受け入れられるでしょう。

鈴木
ルシルケイではラボ育成ダイヤのためのカットを開発しました。ルシルカットという縦横比が2:1の細長いロングペアシェイプです。このプロポーションは、歩留まりが悪いため天然ダイヤではできないカットです。お客さんはラボか天然かということより、デザイン的に価値のあるものを求めています。

石田
まさに天然ではできないことをラボでやる、ということですね。

IJT事務局主催セミナー 天然ダイヤモンドVSラボ育成ダイヤモンド パネルディスカッション

2030年、天然とラボの比率はどうなる?

石田
日本市場は世界より5年遅れていると言われます。5年後には追いつく、追い越すと思いますか。

深澤
現在、宝飾市場の7割が海外製造です。日本製が増えることで業界全体が潤うことにもなりますので、メイドインジャパンのラボ育成ダイヤブランドの今後に期待しています。今後、量的には天然が6、ラボが4、金額では8:2の割合までいくと思います。

大畠
日本とアメリカではラボの受け入れ方が違いますが製品数では天然とラボが7:3、金額ベースだと8:2です。

滝野
100年前の日本は和装文化でした。そこに洋装やジュエリーの文化が入ってきて、まだ100年ほどです。ジュエリーに対する考え方も成熟しているとは言えません。装う文化を再構築することで市場環境を整える必要があります。装う文化や継承する文化を正しく伝えていけば、今後、数量ベースでは3:7でラボの時代がくると思います。

鈴木
ラボの市場は70%まで伸びるとみていますが、世代交代を進めて柔軟な発想を育てないと伸びていかないと思います。また既存の宝飾業界が躊躇していると異業種がどんどん参入してくると思います。

石田
メレはカラット数で考えると9割がラボになるでしょう。
たとえば宝石店をお寿司屋さんに例えてイメージしてみてください。テクノロジーの進化で天然より美味しい養殖マグロができたとしましょう。その場合の選択肢として次の3つが想定されます。

  • 天然にこだわり、天然まぐろだけを扱う
  • 安くて美味しい養殖まぐろに切り替える
  • 天然か養殖かにこだわらず美味しいまぐろを提供し、お客様に選択してもらう

この答えに正解はありません。勝ちも負けもありません。選ばれる理由が違うからです。決断しないのが最大のリスクです。

変わらないものに価値がある。
変わるものに未来がある。
あなたはどちらを選びますか?

経営者として今後どのような経営をしていくのか、いま決断するときだと思います。天然ダイヤとラボ育成ダイヤは敵と味方ではありません。

本日は多くに方にご参加頂きまたご清聴まことにありがとうございました。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

(株)PR現代が主宰するジュエリー小売業のマーケティング実践研究会「JMG」では、2月10日に開催する「JMG新年度フォーラム2026」において、本セミナーで進行統括を務められた(株)PERFECT 代表取締役/日本グロウンダイヤモンド協会代表理事 石田 茂之 氏にご講演いただきます。テーマは、「これからの時代の『天然ダイヤの魅力の伝え方』お伝えします!」。天然&ラボのプロが本セミナーで伝えきれなかったことをホンネ・本気で語ります!JMGメンバーはじめオブザーバー参加も受け付けております。詳しくは、「JMG新年度フォーラム2026」をご覧ください。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◇PR現代公式LINEアカウントに
ぜひご登録ください。
https://lin.ee/rV8g8NU

◇ウェブ運用のご相談・お問い合わせはこちらから
https://pr-g.jp/contact

◇オンラインサポートメニューはこちらから
https://prgendai.stores.jp/

デジタルシフトを進めていますか?

 

関連記事

  1. 付加価値ってなんだろう。

  2. PR現代

    「検索しない時代と、専門店の新しい役割」

  3. 既存の常識や発想が次々と覆される昨今

  4. どの言い回しが正しいのか? ママ振?着まわし振袖?

  5. 伝えるということ

  6. 時々、自店の店名エゴサーチが必要かも

2026年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031