上の写真:ライブコマースを配信する「えんや呉服店」代表 塩冶栄氏
<店舗情報>
屋 号 えんや呉服店
代 表 者 塩冶栄 氏
所 在 地 島根県松江市竪町86-1
取扱商品 呉服全般
電 話 0852-21-4881
ウェブサイト https://matsue-kimono.com/
えんや呉服店(島根県松江市、塩冶栄代表)は、HP(ホームページ)をはじめFB(フェースブック)、twitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)、YouTube(ユーチューブ)などのSNSや、今年4月からはライブコマースを含めたライブ配信を行っています。従来行ってきた呉服店経営のやり方を大きく変え、ウェブを積極的に活用した取り組みを強化しています。三代目の塩冶代表は現在35歳。これを機に塩冶代表に話をお聞きしました。(聞き手・文:西本俊三)
修業先できものを勉強
――御店はWebを積極的に取り組まれているのですが、その前に塩冶さんがそこに至るまでの経緯をお願いします。
「私どもの店は現在、父と私と妻、3人の家族経営の小さな店です。10年前の平成22年(2010)、私は岡山の『染織近藤』さまに修業に行きました。それまでは松江で車の営業をやっていましたが、いずれ家業を継ぐことになっていたので、きもののことは何も分からず近藤さまのところでお世話になりました。修業先ではきもののことからお客さまに対する心構え、接客の仕方、展示会のやり方などさまざまなことを教えていただきました。ちょうど修業先で妻になるうちの奥さんが働いていました」
――修業はいかがでしたか?
「近藤さまでは毎月開催する展示会やお客さまへの訪問などすべて一から勉強でした。店ではリサイクルきものを扱っていたのですが、きものの風合いや素材――大島紬や結城紬、塩沢紬ほかきものの種類もたくさん見ることができ、とてもいい勉強の場になりました。近藤さまのところで3年修業させていただき、平成25年(2013)7月『えんや』に戻りました。ちょうどその頃、母が病気になりガンの手術を受けました。母がお客さまのことをほぼ把握していたのですが、引継ぎがうまく出来ず、その年の11月修業先から帰ってきた私の大きな展示会をするにあたって、母が持っていた名簿をピックアップして、お客さまの家を回りました」
――大変な時にお店を引き継がれたのですね。
「その後、妻の妊娠と母の介護が必要になったので父と相談して母を自宅で見ることにしました…。松江に帰ってきてから、本当いろんなことが重なりましたが、少し落ち着いてきた頃、今のままではいけない、商売のやり方を変えないといけないと思っていた時にあるメーカーの方と出会い、SNSの世界を知りました。最初はFBから始めましたが、それが昨年の2月です」
塩冶栄氏
今までのやり方を変える
――SNSはいかがでしたか?
「その年、9連休があったのですが、SNSの勉強のためその間、店を閉め、業界でSNSやインターネットに詳しい方のお店を訪ね、話を伺いました。話をお聞きしているうちに、今までの行動を変えようと思いました。それまでは、お客さまのところを回り、展示会の案内をし、確約を取るという従来のやり方を続けていましたが、お客さまからのクレームもあり、こういうやり方ではだめだと思いました。
その間、母が病気で亡くなったことや45年ほど勤めて来られた女性スタッフの退職もあり、父と私と妻の3人で出来る体制にしようと思い、もともと1階が洋服売り場でしたが、2年前1階2階とも呉服売り場にしました。
最近はお客さまの訪問もほとんどしておりませんが、これはコロナの影響だけではなく、営業方針を一新し、ご来店のお客さまに対する受け入れ態勢を強化するためです。また、お客さまへの電話も控えております。やはり、店に来ていただき、きものが好きな方が集まるような店にしないといけないと思いました…。そこで、店では妻が『着方教室』を定期的に開催し、『お茶の飲み方教室』や『きもの塾』、『えんや寄席』なども開催しております」
1階のきもの売り場
ライブ配信でリアルに反応
――そういうご苦労の末、SNSをスタートされたのですね。
「現在、FB、ツイッター、インスタ、そしてユーチューブもスタートし、同時配信させていただいております。そして、今年4月、〝まちゼミ〟の打ち合わせの時にzoomで会議をしたのですが、その時、ライブ配信しようという話になりました。それがライブコマースです。最初、10分ほどライブ配信を行ったところ、知り合いやお客さまからコメントが入り、その反応が面白く、そこから流れが変わりました。ライブ配信に必要なカメラなどの機材を買い揃えて、ゲストをお呼びしてライブコマースを始めたのです。
先日は京都できものの汚れ落としや丸洗いなどをされている『リファイン』という会社の職人さんをゲストにお呼びしてライブ配信を行ったところ、いろんな方からコメントをいただきました。中には愛知県の方から『しみ抜きをしてほしい』といった問い合わせがあり、後日見積もりを出しました。すると、その方から『お願いします』と言っていただいたのです。また、京都の小物メーカーの方にゆかたの話をしていただいたところ、注文が入りました。ライブ配信は53回目になりますが、お客さまからの反応があり楽しいですね…」
――リアルにお客さまの反応があるといいですね。
「呉服屋さんというのは敷居が高くて行きにくいといったイメージがあり、どういう人が店をしているのかも分かりづらく、不安があると思うのです。でも、ライブで話をさせていただいていると、店のことや私自身のことも少し分かってもらえるので、安心していただけるのではないでしょうか。顔を出すのは勇気がいることかもしれませんが、ライブ配信をすることでお客さまからの問い合わせや注文が入りますので、これからもライブコマースを続けていきたいと思っております」
「えんや呉服店」外観