お客様の心に響くものとはなんだろう。

今日、来社された小売店のスタッフさんが
二枚の小さなチケットを見せてくれました。

それは地元の競合店が店頭で配っているチケットだそうで、
その内容が強烈でした。

一枚は、着物姿100名チャレンジ!
5円チケット(期間限定)

そしてもう一枚は、
洗える着物単品39円(期間限定)

というものでした。

条件などは記載しておらず、
実際にお店に行ってこのチケットを
渡せば、わずか5円や39円で
着物や小物が手に入るようです。

ただ、本当にそれで済むんだろうかと
思ってしまいますね。

お店にとっては、このチケットを使って
興味を持った新規のお客様に
コイン価格で手に入れた着物に合った
帯や小物、仕立代を提案するチャンスが生まれます。

この出会いをきっかけにして、
着物にハマるお客様が生まれる可能性もあります。

ただ……。

本当にそうなのでしょうか。

本来は洗える着物だったとしても
合繊だったとしても39円で買えるはずはありません。

小物でも5円で買えるものはないでしょう。

きれいごとは言ってられない
ということなのかもしれませんが、

令和時代の今、
こういう手法で手に入れたお客様が
お店のファンになってくれるのかどうか……。

そんなことを考えながら家に着くと、
リビングに、一冊の本が置いてありました。

タイトルは「潜在価値マーケティング」です。

ページをめくって、はじめに
という最初の項目のタイトルが強烈でした。

それは、
「なぜデジタルマーケティングで満足な成果が得られないのか」
というものです。

ウェブマーケティングやウェブ集客を推進する身にとっては、
聞き捨てならないメッセージです。

しかし、よくよく読み進めてみると
この本のタイトルにあるように、

手法にばかり目を向けて、
基本となる、「伝えるべきこと」を見失っていないか?
ということを伝えたかったということがわかりました。

誰に、何を、どのような手段で、伝えるか?

というマーケティングの骨格の部分で、
とかく目新しい手法、今はデジタルマーケティングに
多くの企業が飛びつき、
そもそもの「何を」という部分を蔑ろにしてしまっていると
この本の著者は語っていました。

確かに、
日頃、多くのお店の振袖サイトを調査したり、
分析したりしていますが、
ロゴを取り替えれば、ほかのお店のサイトに早変わりする
というサイトが多いことも事実です。

以前、このブログでも書きましたが、
呉服屋さんには、ほかの業界や他のお店にはない
非常に魅力的な要素があります。
卓越したおもてなし力であったり、
お客様を徹底的に理解しようとするスタンスだったり。

着物はいわゆるオーダーメイドの衣装だから
お客様1人ひとりの寸法を把握した上で、
着用シーンをヒアリングし、
どういう着こなしが良いのかをコンサルティング
しながら商売をするのが基本です。

それゆえにお客様への理解にすぐれています。

また地域密着ということも重要な要素です。

しかし、ウェブサイトへの情報掲載となると
取り扱い商品や価格、特典、などといった
他のお店と比較しにくいものばかりが並んでしまいます。

しっかりとした商売をしているお店には
必ず、そのお店らしさやお店ならではの強みがあるものですが、
ほぼそれらは表現されずじまいです。

こうなってしまうと、著者が言う
「なぜデジタルマーケティングで満足な成果が得られないのか」

という残念な結果になってしまうと思います。
そして、ウェブマーケティングなんて成果が出ないね
と言われてしまうかもしれません。

でも、違うと私は思います。

自社・自店ならではの強みは、
商品やサービス、価格設定というような
目に見えるものにあるとは限らず、
スタッフ1人ひとりが発言する言葉や
お客様への気遣い、
どこまでお客様のことを知りぬいているか、
また、知り抜いているからこそできるコミュニケーション
というような比較的目に見えにくいところにこそ
存在していると思います。

自画自賛はできませんが、
こういう目に見えない強みを
いかにウェブサイトや広告物に表現するかが
腕の見せ所です。

スタッフさんにヒアリングしたり
お客様にヒアリングしたりすれば、
何が自店の強みなのかを全く違った視点で
語ってくれるかもしれません。

ウェブ活用では、
ユーザーが使用するキーワードをユーザーのニーズや課題として捉え
それを解決するための情報発信をすることが定石です。
しかし、それだけでは不十分で、
その上で、自社の強みをユーザーのニーズや課題解決に
貢献できるものとして表現してはじめて
成果をもたらす状態になると思います。

私はこれまで、何度も呉服屋さんの優しさや気遣いに触れ
その度に、これこそが呉服屋さんの強みだと実感しましたが、
そのどれもが明文化しにくいものです。

自画自賛にならないよう、
・お客様の言葉として表現する
・スタッフが語るメッセージとして表現する
・実際のアンケートや調査結果としてのデータを見せる

など、色々な表現の仕方を試してみてはどうでしょうか。

 

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