写真左:(株)光・彩 代表取締役社長 CEO 深沢栄治氏、中央:(株)エフ・ディ・シィ・プロダクツ 代表取締役社長 瀧口昭弘氏、右:(一社)日本宝飾品貿易協会 代表理事 深澤裕氏
1月12日(水)〜15日(土)の4日間、第33回 国際宝飾展(IJT2022・主催:RX JAPAN株式会社)が東京ビックサイトで開催されました。
IJTのセミナーでも特に注目を集め1月14日(金)に開催された「宝飾業界のSDGs戦略」パネルディスカッションについて、ダイジェストで紹介します。(取材・文:嵯峨紀子)
宝飾業界のSDGs戦略
〜持続可能な未来をつくる具体策とは?〜
大手小売/製造メーカートップによるパネルディスカッション
モデレーター
(一社)日本宝飾品貿易協会 代表理事 深澤裕 氏
パネラー
(株)エフ・ディ・シィ・プロダクツ 代表取締役社長 瀧口昭弘 氏
(株)光・彩 代表取締役社長 CEO 深沢栄治 氏
昨今、世界的なSDGsの潮流に合わせ、宝飾業界でもサステナブルな取り組みが次々と行われています。
宝飾業界の大手企業2社がどのようにSDGsに取り組んでいるか、また経営への影響などについて意見を交わしました。
エフ・ディ・シィ・プロダクツ「4°C」の取り組み
ジュエリーブランド「4°C」を展開するエフ・ディ・シィ・プロダクツの瀧口氏からは、すでに始めている取り組みが紹介されました。
・ショッピングバック素材を再生紙に
・サプライチェーンマネジメント
・鑑別不能なブルームーンストーン、ターコイズ、オニキスなどを使わない
・人権尊重のルールに従い、ハラスメントなどの排除
・バングラデシュの水支援などの社会貢献
・ダイバーシティの推進(女性活躍推進プロジェクト)
・ジェンダーレスを見据えた「4°Cオム」、CO2を出さないジュエリー作りのための「cofl by4°C」の展開
・ラボグロウンダイヤの検討
「光・彩」の取り組み
ジュエリー製造メーカーの「光・彩」深沢氏からは、持続可能な開発目標SDGsと企業投資の新しい判断基準ESGLを踏まえた展開として下記の取り組みが紹介されました。
・LBMA、LBBMの認証をとっている地金会社として紛争鉱物の排除
・カーボンオフセットの取り組みとして再生可能エネルギー100%で本社工場稼働
・ワークライフバランスの配慮のため時間管理ソフトを導入し見える化、ひとつの仕事を社員がシェアするなど
・大量の端材をリサイクル地金に
・アレルギーへの配慮としてニッケル、コバルト、カドミウムなど6大元素の排除
ESG投資とSDGsを意識している理由としては、Z世代への影響を考慮しているためとし、ユーザー、社員ともにZ世代が多数派となることを見据えてのことと述べられました。
SDGs パネルディスカッション
質問1:コロナ以降の消費者と業界の意識の変化と今後の予測
瀧口:大きく変わりました。一昨年から年賀状を廃止し、パンフレットやカタログなどの紙媒体も減らしましたが、顧客からの要望もありませんでした。ブライダルカタログはQ Rコードの入ったカードに移行しています。
深沢:年賀状がすごく減りました。紙は貴重な資源と認識を新たにしています。
質問2:ジュエリー業界が取り組むべきSDGsとは? 取り組み可能なSDGsとは?
深沢:職人の引退や廃業による他業界への転職、社員の残業問題や将来へのキャリアアップのロールモデルが必要だと感じています。
瀧口:SDGsにかけるコストは大変なものがありますが、そこをクリアした企業からしか買わないという購買層も増えています。SDGsへの取り組みを重視する消費者はアメリカで31%、イギリス37%、ドイツ41%に対し、日本は15%です。これは今後欧米の意識に追随していくと考えています。これはcofl by4°Cでのインテリジェンス層の動きの反応が大きいことからも予測できます。
CO2に関して自社がどのくらい排出しているのか今は算出できていませんが、グローバルコンサルティングファームに依頼し、ラボグロウンダイヤのCO2についても解明していきたいと思っています。電力は85%がクリーンエネルギーを使用しています。
人事面では週3日のテレワーク、女性社長誕生の必要性などをボードメンバーと話し合っています。
質問3:合成ダイヤvs天然ダイヤ SDGsの基準とは
深沢:それぞれ価値観が分かれるところですが、天然ダイヤは歴史を考えてもエコと言える根拠は少ないと思います。社会への還元や、労働環境への配慮が必要と考え、ナチュラルダイヤモンドカウンシルのソ―シャルプログラムを国内のプロモーションに使えないか検討しているところです。合成ダイヤはインクルージョンもなくきれいでリーズナブルといえますが、これをエコといえるのかは疑問です。地面を掘っていないのは事実ですが。
瀧口:親から子へ、子から孫へ受け継いで行ける点では、ジュエリーはサスティナブルといえます。ラボグロウンは手軽で気軽に買えますが、5万気圧のエネルギーを使うことを考えると単にエシカルとは言いにくいので、全体のことを含め考えていかないと答えは出ないと思っています。
質問4:素材のトレーサビリティーはどこまで可能か?リサイクルと表示、説明責任など
深沢:デビアスは鉱山、ラフ、カットまでトレーサビリティーを追うことが可能ですが、一般に流通するダイヤすべてを追うことは現状不可能です。どこかがやるぞと言って、業界全体が追従する動きが出てくるのではないかと思っています。色石は難しいと思います。
瀧口:R J C加盟のところから仕入れているので、自社のダイヤ販売の15%はトレーサビリティが明確です。鉱山を掘っても、同等以上の森林植樹もしています。
労働環境については170店舗、1000人の従業員がおり、抜き打ち調査もあるので対策はしていますが、過重労働になっているところもあることは把握しています。
質問5:SDGsによる宝飾需要を作り出すヒントは
深沢:天然ダイヤは非常に価値の高いものになってくると考えています。インクルージョンにもロマンがあるので、新たなブランディングの可能性があります。また、友人や親から譲り受けたものを含め、すべての製品をリメイクの対象とすることで、今までとは違う価値観が生まれると考えています。
瀧口:サスティナブル消費について世界人口の約30%が認識していますが、日本ではまだ15%です。モノ消費→コト消費→意味消費とシフトする中で、皆さんとトライアングルで歩んでいきたいと思います。今後はクリスマスなどに対しての意識は低下し、誕生日などのパーソナルな記念日に対する意識は上がっていくと考えられます。消費者を楽しませるための新しい手段を考えていきたいと思っています。