1990年に15,100億円に達した着物市場は、
1992年から毎年1,000億円ずつのペースで減少し続け、
2010年に3,200億円となり、そこから毎年100億円ずつ減少。
2013年からはほぼ横ばい傾向でしたが少しずつ減少し
2018年には2,875億円になりました。
これまでの流れでいくと2023年の18歳成人に切り変わる年には
2800億円を切るレベルまで落ち込むかもしれません。
20年前くらいまでは、振袖からブライダルへという黄金の方程式があり、
留袖や訪問着がチラシでバンバン売れていました。
当時振袖も一揃え100万円が当たり前で、
レンタルする人は稀だったと記憶しています。
しかし、現在黒留袖や色留袖などがチラシで
売れるということは珍しいことであり、
結婚式で着る着物はレンタルするのが一般的です。
合理化・エコブーム・生活者の価値観の変化などで
着用機会の少ないフォーマル着物はレンタルで済ますことに
なんら抵抗を感じなくなっています。
市場規模の減少に歯止めをかけることは
相当難しいことだと感じます。
一方、外国人向けの着物レンタルやリサイクル着物の台頭なども
手伝って、花火大会や夏祭りの時に浴衣を着ている方は
以前よりも多くなっているんじゃないかと感じますし、
ネットで安い着物を入手することもできるので、
着物を気軽に着られるチャンスは格段に増えました。
ただこの傾向と着物専門店の成績とがリンクしていない状況です。
専門店側も、販売が厳しくなる中で、
催事に誘うお客様は来店・購入の可能性が高い人に集中し、
名簿の上位20%程度だけが活性化する
というスタイルが定着してきています。
名簿にある残りの80%の顧客に対しては、
コミュニケーションが
十分に行われていない傾向が
より高くなってきているように感じます。
そもそも次にコミュニケーションすべきお客様が誰なのかが
不明確であるケースも散見されます。
カルテを持っている担当者だけが顧客の状況を把握していて、
担当者の裁量でアプローチする人を決める形になり、
結果として相性の良い人だけと対話することとなります。
店全体としても個々人としても
売上目標、集客目標があるため
名簿があったとしても、
それを十分に活用する余力も余裕もないという切実な現状もあります。
着物専門店と一口にいっても、
地域性や規模、店舗数や店舗形態など
タイプは様々。
同じ方法でお店を活性化することは難しいと思いますが、
今名簿に名前があるお客様一人ひとりの情報を
しっかりと分析し、
優先順位をつけることは可能だと思います。
売上金額順でランキングするだけでなく、
いわゆるRFM分析(R:最新購入日/F:購入頻度/M:購入金額)で分類し
優先順位をつけてみるだけでも、コミュニケーションすべき順番が変わります。
人間なので、スタッフ一人ひとりが違う性格を持っているように
お客様との相性には合う合わないがあるので、
一概には言えませんが、次にコミュニケーションすべきお客様の抽出は、
定期的に行うべきではないかと思うのです。
ちなみに専門書には次のような傾向が紹介されています。
・R (最新購入日)が高い顧客ほど将来の収益に貢献する可能性が高い
・R(最新購入日)が低ければF(購入頻度)やM(購入金額)が高くても他社に奪われ離反している可能性が高い
・R(最新購入日)が同じならF(購入頻度)が高いほど常連客になっている
・R(最新購入日)が同じならF(購入頻度)やM(購入金額)が高いほど購買力がある顧客
・R(最新購入日)やFが高くてもM(購入金額)が少ない顧客は購買力が低い
・F(購入頻度)が低くM(購入金額)が高い顧客はRの高い方が良い顧客
・F(購入頻度)が上がらないか下がっている顧客は他社に奪われている可能性が高い
・RFMすべてが低い顧客は切り捨てることも検討
参考:『経済・経営・商学のための「実践データ分析」』講談社
日頃、ウェブサイトのアナリティクスやサーチコンソールの分析を
していると感じるのですが、
現場の肌感覚とデータとして上がってくる数値には、
少なからずギャップがあるということです。
スタッフさんが、可能性は低いと感じていても、
分析結果は可能性が高いことを示すこともあると思います。
そうしたアナログとデジタルを融合(ウェボリューション)した
現状分析は、できるだけ早い段階で行ってみる必要があると感じます。
先日お取り組み先の小売店で、こんな話を聞きました。
観光で来日した外国の方が振袖や帯、小物などを
購入してくれたというエピソードです。
この方は、振袖を4枚くらい持っているそうで、
着物が大好きなんだとか。
外国人観光客であっても、
高額の絹布の振袖を購入してくれることがあるという事実。
意外でした。
今、自店の顧客管理データや
来店状況を定期的に確認しているかどうか、
ぜひ検証していただければと思います。
もし、行っていなければ一度RFM分析を行い、
上記の傾向と照らし合わせ
次にコミュニケーションすべき顧客をリストアップ。
そして、その方と情報誌やハガキ、電話など
コンタクトを取る手法を決め、アクションを起こしてみる。
それを検証すれば、これまでの勧誘リストとは
違う勧誘リストができ、催事に参加してくれる顔ぶれを
変えることができるかもしれません。