こんにちは、PR現代の下島です。
2025年秋。金価格の上昇が止まりません。
純金(K24)は1g=20,000円を超えて、18金(K18)は1g=15,000円前後で推移しています。
宝飾業界に長く携わってきた私たちにとっても、これほどの高値は前例がありません。
仕入れ価格はもちろん、製品づくりや販売価格の設定、そして社員の賃金にも影響を及ぼしています。
一方で、視点を変えれば、いまは店舗の価値を見直すチャンスでもあります。
在庫の価値が上がり、価格を正しく伝える工夫をすれば、利益を確保しながらお客様の信頼を高めることができます。
今回は、金価格急騰による宝飾店の値上げ・賃上げ対応策に関して、感じていることを紹介します。
1. 金価格高騰がもたらす現場の変化
金価格の上昇は、単に仕入れ値が上がるというだけでなく、商品そのものの印象に影響します。
たとえば、以前10万円で販売していたリング。
今では同じデザインを作ろうとすると、地金代だけで予算を超えてしまうため、細く・軽く・華奢な作りにせざるを得ません。
見た目の印象が変わると、お客様からは「前に見たものより薄い」「ちょっと頼りない」と感じられてしまいます。
結果、価格の上昇とともに満足感の低下を招きかねません。
このように「同じ価格でも華奢になる」ことが、いま多くの宝飾店が直面している問題です。
2. 「値上げ=仕方ない」は理屈の上であり、実際は“買い控え”が起きている
ニュースや経済番組では、「物価上昇はやむを得ない」「値上げに理解が広がっている」といった声が多く聞かれます。
しかし、現場の実感は少し違います。
実際のところ、お客様の心理は「値上げ=仕方ない」ではなく、「値上げ=買い控え、仕入れ控えによる品薄感」に近いです。
「もう少し様子を見よう」「安いときに買えばよかった」という声が、接客の現場ではよく聞かれます。
しかしその一方で、“今のうちに良いものを”という動きも確実に増えています。
この心理を変えるために必要なのは、単なる価格説明ではありません。
納得できる理由と、それ以上に感じられる付加価値の提示です。
たとえば、こうした言い方もひとつです。
「金の値段がここ数年で約2倍になり、製造コストも大きく変わりました。
それでも、私たちは品質を落とさずに“安心して長く使えるジュエリー”をお届けしたいと考え、
このたび、少し価格を見直させていただきました。」
誠実でていねいな説明を心がけることが、お客様の信頼を守る第一歩だと思います。
3. 値上げのタイミングと方法を工夫しよう
価格改定は、伝え方とタイミングによって印象が大きく変わります。
① 段階的に上げる
一度に大きく上げるよりも、少しずつ上げていくほうが受け入れられやすい。
② デザイン変更と同時に上げる
新作やリニューアルのタイミングで自然に価格を更新する。
「新しいデザイン=価値が上がった」という印象を持たせやすくなります。
③ 付加価値を足して上げる
ダイヤを一石追加したり、表面仕上げを変えたりすることで、「価格以上の魅力」が感じられるようにする。
④ 値上げ前・後のセールを活用する
値上げ前に「今が最後のチャンス」と打ち出す。
あるいは値上げ後に「新価格でもこの品質でこの価格」と伝え、お得感を演出する。
重要なのは、お客様に「値上げ=損」と感じさせないことです。
“価格改定”ではなく、“品質維持のための見直し”として伝えることで、抵抗感を減らせます。
4. 商品構成を見直す ― 多様な素材と価格帯のバランスを
地金価格が上がると、これまでの定番構成では対応しきれなくなります。
特に、10万円前後の価格帯では、金やプラチナ素材だけで作ると見た目が見窄らしくなりがちです。
そこで、最近は次のような工夫をする店舗が増えています。
- ガラス・セラミック・シルバーなどの異素材を使ったファッションジュエリーを導入。
- コスチュームジュエリーの導入で、華やかさと買いやすさを両立。
- バッグ・シューズ・アパレル・コスメなど、ジュエリー以外のファッションビューティーアイテムの強化・導入を検討。
ただし、注意点もあります。
大手ファッションジュエリーチェーンでは取り扱っていますが、K10(10金)ジュエリーは実際使用してみた印象として、変色しやすく、長期使用には不向きです。
「本格的な宝飾品」を扱う専門店では、安易に10金、9金商品へシフトせず、経年変化の危険性を慎重に考える必要があります。
大切なのは、「価格を下げること」ではなく、「お客様が選びやすい魅せ方」に変えることです。
“少し軽くても美しい” “異素材でも楽しい” “組み合わせで個性を出せる”――
そうした「新たなすてき!」価値の提供が、価格を超えた満足につながります。
これをどう創造できるかが、ジュエラーの真骨頂だと思います。
5. 在庫の価値を見直せば、利益は変わる
金価格の上昇は、過去に仕入れた商品や地金、パーツの再評価も意味味します。
これは、言い換えれば「いま持っている在庫の中に、利益が眠っている」ということです。
たとえば、
仕入れ当時18金 1g=7,500円 → 現在 1g=15,000円(K18換算)
同じ商品でも、価格を見直し、適正に評価したうえで、買い得感を持たせて販売すれば、
その差益が利益になります。
大切なのは、「上げる」ことではなく「適正に評価する」こと。
在庫商品がもつ魅力・価値をていねいに説明し、納得してもらうことです。
例えば・・
「このリングは、以前よりも地金の価値が上がっています。
ですが、お客様に手にとっていただき、そして長く愛用していただけるよう、
デザインと価格のバランスを勘案し、特別にこの価格でご案内しております。」
このように伝えることで、「前からある古い在庫」ではなく「お買い得感のある価値ある商品」と受け止めてもらえます。
在庫を“売る商品”ではなく、“会社の資産”として再評価し、販売するチャンスでもあります。
6. リサイクル・リフォーム・お買い替えで対応力を高める
また、金が高い今だからこそ、リサイクルやリフォームを提案するチャンスです。
- 使っていないジュエリーを下取りし、新しいデザインにお買い替えいただく。
- 古い地金を再利用して、思い出を生かしたリフォームを行う。
→地金の買取り相場も高値であることを伝え、「今が下取り・買い替えのチャンス」と知らせませんか?
このような提案は、お客様に「得をした」「賢く買い替えられた」という満足を与えます。
同時に、店舗にとっても新しい販売チャンスとなり、お客様の負担感も抑えることができます。
“高くなったから売れない”ではなく、
“高くなったからこそ提案できることがある”――この発想の転換が大切です。
7. 賃上げは「固定給+成果」でバランスを
金価格の上昇に伴い、物価全体も上がり、社員の生活も厳しくなっています。
経営者としては、社員に還元しつつ、会社を守るバランスが求められます。
ポイントは、固定給を上げる方向だけに目を向けず、成果連動の仕組みを取り入れること。
売上や粗利に応じてインセンティブを支給することで、社員のやる気と会社の利益を両立できます。
例えば・・
- 対象商品を販売した場合のボーナス
- チーム目標を達成したときの全員加算
- リフォーム提案や下取り成約への評価ポイント
こうした制度により、社員が「高い商品を自信をもってすすめられる」ようになります。
お客様にも喜ばれ、社員もやりがいを感じる――そんな仕組みづくりが、これからの時代に必要です。
8. まとめ ― 「ていねいな説明」と「“新たなすてき体験”の提供!」
金価格が高い今は、単なる「高騰の時代」ではありません。
説明と体験の時代です。
- 地金価格は、K24=20,000円/g、K18=15,000円/g
- 同じ価格では“華奢化”が進み、見栄えと満足感が下がる。
- 「値上げ=仕方ない」は理屈上で、実際は「買い控え」につながる。
- だからこそ、「ていねいな説明」と「新たなすてき体験!」の提供が欠かせない。
お客様は「高いから買わない」のではなく、
「理由がわからないから買わない」と考えましょう。
誠実に説明し、納得してもらい、
「買ってよかった」「この店で選んでよかった」と思ってもらえるような体験の積み重ね。
地金が高い今こそ、
誠実な接客と確かな価値づくりが、宝飾店の未来を明るく照らしてくれます。
弊社が主宰する宝飾小売業のマーケティング実践研究会「JMG」では、メンバー店の皆様に対して金価格急騰による宝飾店の値上げ・賃上げ対応策に関するアンケートを行い、メンバー限定での意見交換を行う準備をすすめています。
ピンチをチャンスに!
JMGではお仲間を募集しています。
詳しくは、JMGのホームページ をご覧のうえ、どうぞお気兼ねなくお問い合わせください。
JMGご紹介サイト https://pr-g.jp/promotion/jmg
メンバー店インタビューページ https://pr-g.jp/category/jmg/jmg-interview
JMGのご案内動画 https://youtu.be/2clvsq43q7A
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文責:下島 仁(株式会社PR現代 代表取締役)
ジュエリー専門店のマーケティング支援・JMG主宰