スティーブ・ジョブズの言葉


こんにちは、PR現代の神山です。PR現代のオフィシャルサイトの顧客創造の突破口でもスタッフによる更新を行なっていますが、こちらでもブログを更新してまいります。どうぞよろしくお願いします。

去る6月27日(現地時間)、30年近くアップルのデザインを中心的にになってきたジョナサン・アイブ氏がアップル社を退社し、新しいデザイン企業「LoveFrom」を立ち上げるという衝撃的な発表がありました。
ジョナサン・アイブ氏といえば、スティーブ・ジョブズのパートナーとして、カラフルな色とデザインで一世を風靡した「iMac」(1998年)をデザインし、世の中の人のパソコンのイメージを根底から覆した人です。その後、iPod(2001年)、iPhone(2007年)、iPad(2010年)、Apple Watch(2015年)を手がけ、スティーブ・ジョブズ氏とともに、世界中の人々のライフスタイルを変えました。
当時、アップルのウェブサイト上で、iPhoneのデザインや機能を紹介する動画にジョナサン・アイブ氏が出ていて、食い入るように画面を見ていた記憶があります。
私は、日本でiPhoneが発売された当日、店舗を何軒もはしごして探し回るほどに、アップル製品のファンで、ジョブズ氏がおなじみのファッションスタイルでiPhoneをポケットから出してプレゼンしたときの衝撃を今も忘れることができません。

すべては人の、誰かを想う気持ちから始まる。

ジョナサン・アイブ氏退社に関するニュースの中に、スティーブ・ジョブズ氏のこんな言葉が紹介されています。
「ものを作る時に大切な心意気というのは、会うこともないであろう人への愛と心遣いなんだ」
確かにこのジョブズ氏のものづくりの哲学が、実際のアップル社製品にしっかりと息づいているといつも感じています。ふつう製品には製品マニュアルや取扱説明書がついていて、それを見ながら操作したり組み立てたりしますが、アップル製品には取扱説明書はついていません。それでも箱から出してすぐに使うことができるものがほとんどです。iPhoneを初めて手にしたときも、とくに操作に迷うことはありませんでした。
そういえば当時、通勤電車の中で自分としては誇らしげにiPhoneを操作していたのに、まわりの人の視線は、奇異なものを見るかのような冷たいものだったのを思い出しました。
初めて操作するスマートフォンという未知の端末を、説明書なしにいとも簡単に操作できるシンプルなつくりには、本当に驚かされました。それまで折りたたみ式の携帯電話が当たり前で、文字や数字はキーボードを打つというのが常識でしたが、まさか物理的なキーボードがひとつもないデザインになろうとは夢にも思いませんでした。そして12個の電子キーボードを使って日本語を入力するフリック入力という方法にも驚かされました。今では当たり前すぎて誰も驚いたりしていませんね。
さて、過去のインタビュー記事にも、ジョナサン・アイブ氏は、自身がデザインした製品について、誠実さ(integrity)や配慮(care)という言葉を度々使っていて、ジョブズ氏の製品に対する哲学や思想をしっかり共有しているんだなと感じました。
かつて、スティーブ・ジョブズ氏がアップル社から追い出され、利益だけを大きくすることばかりを追求し、製品を使う人々への心遣いや手間を忘れる会社に変貌していく中、ジョナサン・アイブ氏は、デザインの外側しか興味がない会社にはいられないと退社しようと考えていたとき、ジョブズがアップル社に復帰し、二人で膝を突き合わせながらMTを重ね、世界を変える製品を生み出したとか。アイブ氏は当時を振り返り、こう話しています。
「我々デザイナーに要求されたのは、ただ、どういう外観かを示すモデルだけ。それをエンジニアがなるべく安く作る」

ジョナサン・アイブ氏に大きな影響を与えたと言われるディーター・ラムス氏のデザイン哲学

ジョナサン・アイブ氏がデザインしたiPhoneやiPadは、工業デザインの世界で神様のような人と言われているディーター・ラムス氏の影響を受けたと言われています。不覚にも私は、このディーター・ラムス氏という方を全く知りませんでした。アイブ氏退社の記事を読んだことで初めてこの方のことを知ることになったのですが、なるほどすごい人なんですね。
ラムス氏は、ドイツのヴィースバーデン出身のインダストリアルデザイナーで、ラムス氏のデザイン哲学は「Less,but better(より少なく、しかしより良く)なのだそうです。髭剃りで有名なブラウン社と密接に関わってきた他、コーヒーメーカーや計算機、ラジオ、オーディオ機器、オフィス機器など色々な製品を世に送り出してきた方なんですね。そしてなんといっても、すごいのは、この「良いデザインの10箇条」です。

ディーター・ラムスの「良いデザインの10箇条」
1. 良いデザインは、革新的である。
2. 良いデザインは、製品を便利にする。
3. 良いデザインは、美しい。
4. 良いデザインは、製品を分かりやすくする。
5. 良いデザインは、謙虚である。
6. 良いデザインは、誠実である。
7. 良いデザインは、恒久的である。
8. 良いデザインは、細部まで首尾一貫している。
9. 良いデザインは、環境に優しい。
10. 良いデザインは、限りなくデザインされていない。

デザインを外見的なものと捉えずに、使う人への配慮や誠実であることをモットーとするところジョナサン・アイブ氏の考え方と共通するものがありますね。

ちょっと突飛かもしれませんが、着物にもジョナサン・アイブ氏やディーター・ラムス氏のデザイン哲学に通じるものがあると思えて仕方ありません。
直線断ちで、体型にあわせて調整ができる上に、型紙で作る洋服と違い、捨てる部分がありません。解いて縫い合わせれば元の反物に戻ります。今の令和時代になっても着物はダサいと表現されることは全くといっていいほどありません。これは、ラムス氏ではありませんが、限りなくそぎ落とされたデザイン性やデザインされていないことに通じるように思います。
着られなくなっても、サイズを調整したりして着続ける。最終的に着られくなっても、他のアイテムとして利用するという発想。今では当たり前のリサイクルやリフォーム、循環型の生き方っていうのをはるか昔から実践してきたのが日本人なんですね。
人々への配慮だけでなく自然への配慮や自然に対して誠実でありたいと考える。
そうやって考えると「着物」という衣装を生み出した日本人って本当にすごいなって思います。最先端の工業デザインと共通する根っこを持った着物。世界中の人が日本に注目する今だからこそ、着物の魅力をより一層アピールしたいですね。

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