日本きものシステム「JKS東京例会」
7月5日(火)・6日(水)東京プラザマームで開催
全国の有力呉服店47社で構成される「日本きものシステム共同組合(通称JKS)」(株式会社牛島屋・武内孝憲理事長)は、7月5日(火)・6日(水)の2日間、東京プラザマーム2階と3階会場を用いて、東京例会を開催しました。
今回の東京例会は、江戸・東京の洒落もの産地やカジュアルきものをより深く学ぶ機会として、「東京カジュアルキモノ展」とのタイアップ開催をはじめ、カジュアルきものの分野に造詣の深い多彩なゲスト講師による講演会など、東京発のカジュアルなきものの可能性を探るたいへん意義ある勉強会となりました。ここではその一部を紹介いたします。
「東京の染織やビジネスを知る一歩進んだ勉強会」
(JKS 武内孝憲 理事長)
「今回の東京例会は、恒例の産地例会から一歩前進し、東京の染織やカジュアルきものビジネスの可能性を深く知ることができる、一歩進んだ勉強会として開催することができました。開催にあたっては早くから準備をすすめ、特に(株)三勝の天野豊会長はじめ、当組合 総合戦略事業部の伊藤大介部長(兼副理事長・(株)小川屋社長)に尽力していただき、盛況に開催することができました」。
「東京カジュアルキモノ展と共に新たな形の移動例会」
(JKS 総合戦略事業部 伊藤大介 部長)
「毎月京都でやることが多いJKSの月度例会ですが、年に一度は東京でやりたいと考え、東京での産地例会をどうのようにすべきか、武内理事長と相談しながら検討を重ねてまいりました。そして、江戸小紋や染めのメーカーの方々や三勝の天野会長と話をし、このような形で開催することに確信を持ち、この度ようやく実現することができました。東京織物卸商業協同組合が中心となり毎年行なっている「東京カジュアルキモノ展」とジョイントし、ブース出展には21社も協力してくださいました。
今回の出展先や講師の方々の講演から、振袖からの顧客づくりとはまた違う新規客づくりのあり方を知ることができました。そしてカジュアルきものに取り組むにしてもやる場合は徹底して取り組むことが大切だと理解いたしました。
フォーマルにしろ、カジュアルにしろ、同じきもの業界です。共に明るい未来に向かって、これからも歩んでいきたいと思っております」。
「いよいよカジュアルの時代がやってきた」
(三勝 天野豊 会長)
「きものサローネなどのきものの啓蒙イベントを運営していて感じることは、きもの好きな一般消費者はたくさんいるが、小売店さんは元気なところが少ないことです。消費者の動きをみていると、いよいよカジュアルなきものの時代がやってきたと感じています。消費者が着たいきものを提供する機会が増えれば、業界側とのギャップは小さくなるのではないかと感じます。今回もその良い機会になれば幸いです」。
JKS版東京カジュアルキモノ展
今回のJKS東京例会に合わせて、東京プラザマーム2階会場では「JKS版カジュアルキモノ展」が開催されました。出展社は21社にのぼりました。JKS組合員は、商談や仕入れ、情報収集を活発に行いました。
<出展社(順不同・敬称略)>
・近江屋 ・丹羽幸 ・ツカキ ・和光 ・ウライ ・三勝 ・福和商事 ・日本橋丸上
・DENIM KIMONO(青木被服) ・京都小泉 ・季節苑工房 粟野商事 ・HANYI.YA
・菱屋カレンブロッソ ・片山文三郎商店 ・.HAKU(京扇) ・matou KIMONO(Produce M)
・月之 ・ろっこや(ハミルトン) ・NEO KIMONO(東京プロカラーラボ) ・コウジュ ササキ
・数-SUU-(ブラフシューペリア) ・ウタコドヲ製作所 ・きもの遊結 ・MEDAA,
・組紐アクセサリーmitorit ・シルフィード ・和裁師実演コーナー
講演会1「運命を感じるきものとは? スタイリングがとても大切」
KAPUKI 代表取締役 腰塚玲子氏
きものショップ「KAPUKI」は東京・中目黒の駅から徒歩3分の場所に、今から8年前、2014年にスタートしました。主人がカメラマン&ディレクターをしており、主人が立ち上げたブランドを受け継いで私が経営しています。それからは毎日、きものを着て生活しています。お店では和柄のTシャツ、ベルト、マスクなども販売しており、和のアイテムから、きものにつながっている方も多いです。デニムキモノは岡山で作っています。
「振袖については、娘に着せたい振袖がなかったので、自社でオリジナル振袖を開発しました。自分はいま53歳ですが、私が若い頃に着た振袖と変化がないのに驚きました。『運命を感じないなら着ないでほしい。』というキャッチコピーでデビューさせました。すると『こういう振袖が着たかった。欲しかった』というたくさんの声が全国から届きました。当店は地元密着の店ではないので。沖縄の離島からも、北海道、九州からもお客さまがいらっしゃいます。当店の振袖は、成人式の後も着れるようなシックな柄のものが主流です。袖を切ってずっと着れるような着物です。お客さまからの要望で、デニム着物の振袖も2年前からはじめました。『きものは8割がレンタル。購入は2割』と言われますが、私は、購入して手元においておける着物というのを出したいと思っています。買うとたしかにお手入れがたいへんですが、いろんなハードルを下げたいと思っています。なお、お店に置いてある商品の8割は正絹です。価格も幅広く、250万円の振袖もあります。購入の場合は100万円を超える方もいらっしゃいます。すべてが当店のブランドを表現するためのものなので、SNSだけでなく、振袖のビジュアルブックにもとてもエネルギーをかけています。
当店では、若い子をリサーチして、求めるものを発表しています。お祝いの席に、こんな帯ベルト?と思うかもしれませんが、そのような帯を求めるニーズが実際あります。袋帯を要望される方もいれば、帯ベルトを選ぶ方も多いです。40代くらいのお母様が自分も着たいという方もいらっしゃいます。木綿でモノクロームの振袖も、メーカーとタイアップし製作しました。
スタイリストとして感じていることは、組み合わせの先の、半襟のちょっとした角度、ほんの少しの補正の入れ方でスタイルはまったく変わるので、その美しさを体感してもらいたいということです。きものはスタイリングがとても大切だと感じています。
和装業界はまったくわかりませんでしたが、現在、社員三人、バイト三人、合計7人でショップ運営にあたっています。みな、KAPUKIが好きで、それがお客さまに伝わっているようです。
講演会2「カジュアルきものと、フォーマルきものの(部分)融合」
スタジオアレコレ 編集長 細野美也子 氏
スタジオアレコレは、月刊『アレコレ』の発行をはじめ、呉服関連企業のCI、問屋の商品開発のプロデュースなどを行なっています。今回はカジュアルきものと、フォーマルきものの(部分)融合の可能性について、お話しをさせていただきます。
カジュアルきものの可能性について、アレコレではつぎのように考えています。
1:きものへの登山口を増やせる。
2:イベントに繋げやすい。
3:アンテナに引っかかりやすい。
4:現状の衣生活のイメージを引き継げる。
5:提案ができる(ニュースをつくれる)。
6:きものとしての楽しみ、コーディネートに制限がない。
このようにポテンシャル=拡張性が高いところがカジュアルきものの魅力ではないかと思います。
カジュアルきものとフォーマルきものは別々なものではありません。服飾は変化していくものですし、リサイクル、おさがり、ふるいものはダメというのはよくないという感覚も消費者にはないと感じます。着てもらわないときものの楽しさが伝わらない。という点でカジュアルきものを捉えてみるのも一つではないでしょうか。
アレコレで特集した「カジュアルきもの分割論」では、スマートカジュアル、デイリーカジュアル、ユニークカジュアルの3つのカジュアルに区分しています。一方、フォーマルきものについては「普遍的な美意識」として捉えられていますが、フォーマルきものも時代によって変化しています。きものの種類で限定するのではなく、着方とシーンと場所で規定するほうが自然のように思います。
カジュアルきものが対峙するところは、洋服です。その場合、コーディネートがより重要になってきますが、アレコレではカラー協会と連携し、きものの色の組み合わせの勉強会なども主宰しています。センスの7割は知識で補えるといいます。私たちのセンスを磨くことも、きものをより多くの方に広げるには必要な要素だと言えるかもしれません。
多くの小売店が参加し見聞を深めた今回の東京例会は、7月5日(火)のJKS版東京カジュアルキモノ展、講演会に続き、7月6日(水)は各事業部からの発表や、工房見学会を開催。充実の東京例会は2日間の幕を閉じました。
(文・PR現代 下島仁)
日本きものシステム共同組合(通称JKS)
本部 〒600-8176 京都府京都市下京区烏丸通六条上る北町181
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